作品紹介
稀有な日本人、ぶれない巨大な原木の貴重な記録。
不透明な未来への道標。
社会状況が劇的な変化を遂げる今、先の見えない不安と焦燥を抱える私たちを励まし続けてくれる人がいます。世界で最も短い詩「俳句」に人生を懸けた金子兜太さんです。その兜太さんを2012年から2018年最期を迎える直前まで折にふれて撮り続けたドキュメンタリー映画が完成しました。兜太俳句を縦軸に、最晩年となる足かけ7年間のインタビューを織り交ぜながら構成。兜太さんとの語らいの場を慈しみ、兜太さんに寄り添うように丁寧に撮り進められた貴重な映像記録です。
ありのままの兜太さんは、ときに山間の出で湯に浸かり、一杯のお茶を味わい尽くし、自作を詠み解き、父親直伝の秩父音頭を絶唱し、時世を案じ、平和を模索します。
監督は、NHKのディレクターとしてドキュメンタリー番組「がん宣告」「NHK特集 シルクロード」「チベット死者の書」などで数々の賞を受賞、大ヒット作『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』で知られる河邑厚徳。
産土の秩父に根差した骨太の言葉、映像だからこそ伝わる息遣い、自然体の語り口と深く温かいまなざし。すべて記憶として永く私たちの心にとどまることでしょう。
金子兜太 (かねこ・とうた)
俳人。1919年埼玉県生まれ。東京帝国大学経済学部卒。旧制水戸高等学校在学中に句作をはじめ、加藤楸邨に師事。1943年日本銀行に入行、従軍を経て、終戦後復職。1974年同行を定年退職。1955年第一句集『少年』刊行。1956年現代俳句協会賞受賞。1962年同人誌『海程』を創刊、1985年から主宰に。1983年から現代俳句協会会長、1987年朝日新聞「朝日俳壇」選者。1988年紫綬褒章を受章。1989年「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」選者。2008年文化功労者。2015年中日新聞、東京新聞の「平和の俳句」選者。句集に『暗緑地誌』『遊牧集』『皆之』『両神』『日常』など。小林一茶、種田山頭火の研究家として著書多数。